鰐とリボン

「肩肘はらずいつのまにやらいかず後家な40代」が本を紹介するブログです

ひとりごとは創作の始まり

どんな人が面白いのか。世の中にはその道の追求者がたくさんおり、人生をかけてお笑いの道の追求に挑んでいる人もいるから、おいそれと生ぬるいことは言えない。

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「わたしは全然不幸じゃありませんからね!」, 谷口奈津子(著), エンターブレイン

が、個人的に面白さというのはモノローグで始まりモノローグで終わるのではないかと思う。誰に頼まれたわけでもなく、誰かのためでもない。一人でいようが観客がいようが関係ない。自然と生まれ溢れだす独白ーーーモノローグがテンポよくずば抜けて面白いことーーーそれが面白さなのでないかと思う。

そう考えると谷口奈津子氏の面白さはホンモノである。売れない時代の自意識過剰さや周りとの関係、困窮生活の愚痴。こうならべるとありきたりで(当時は)売れない漫画家志望女子の日常報告に陥りそうなところを彼女の発想の非凡さがぶち壊していく。求める幸せこそありきたりだが、そこへ向けられた彼女のバイタリティはすごい。恰好を全くつけていない。まっすぐで、かつ偏執的である。

そして彼女はネタになる友達にも恵まれている。男女を意識しすぎないフラットな関係や会話も読んでいてすがすがしい。皆、お金はなくても好きなことしかしない、もしくは無理をしてまで嫌なことをしない主義の人たちだからなのかもしれない。

第三章「レバ刺しとわたし」はここだけで絵本になるくらい美しい愛の物語である。それにしても彼女は泣き顔の描写がうまい。さまざまな感情や気持ちを魅力的に表現できる作家なのだと思う。