鰐とリボン

「肩肘はらずいつのまにやらいかず後家な40代」が本を紹介するブログです

思い出上書きバージョンアップ

最近、大々的な断捨離をした。私の母は昭和ヒトケタ生まれで物がない時代に育ち、なかなか物を捨てられないうえに思い出の品は取っておくタイプの人だったので、私たち姉妹の幼少時からの図工作品も大量に残っていた。

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「見仏記」 いとう せいこう(著), みうら じゅん(著)

そのなかに京都・奈良の修学旅行の際の自由研究、絵付きレポートもあった。今見ると興味があるところだけ妙に詳しい(資料を読んでグっときたところをまんま書き写した卑怯なもの)なかなかにできの悪い作品だったので即効捨てた。

さてそこで本書である。いとうせいこうみうらじゅんによる仏像を巡る旅・人気シリーズの記念すべき第一冊目だ。熱の入った完成度の高い自由研究と絵日記。二人とも大人でその道のプロだから当たり前だけど。この二人の掛け合いの面白さはユニット「ROCK'N ROLL SLIDERS」のトークイベント「ザ・スライドショー」でも有名だが、それはこの共著「見仏記」でもいかんなく発揮されている(のちに映像でも見られるようになった。そちらも期待を裏切らない)。

実際、学校で本当に気の合う友達に出会う確率なんて低い。また思い出を作れ!的旅行なんてそもそもナンセンス。本当の意味で記憶に残る面白い修学旅行をしたいなら、彼らのように大人になってから趣味と気の合う友達とメモ帳もしくはスマホ片手に出かければいい。そこにほんとうの楽しさがある。

ミュージシャンの仕事はひたすら修学旅行と文化祭の繰り返し、というのは確か及川光博の名言だが、それは楽しいことだけしかやらない、というより楽しさを観客に演出し続けなくてはならないという強迫観念を内包している。『楽しくなくちゃ飽きられる』アーティストの宿命でもある。本書はなにごとも楽しくやり続けられることこそが才能なのだということにも気づかせてくれる。非公開の秘仏も多いが、この本片手に二人の足跡を追う旅もイイかも。