鰐とリボン

「肩肘はらずいつのまにやらいかず後家な40代」が本を紹介するブログです

ウマイとヘタの向こう側

人は己(というかプライド)を守るため日常的に様々なもので武装している。化粧、ファッション、経歴、家柄、知性、などなど。人と出会って最初に得られるのは外側の情報であり、よほど踏み込まない限りなかなかその奥を知ることはできない。

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ナンシー関の記憶スケッチアカデミー」ナンシー 関 (著, 編集, イラスト), 角川文庫

しかし誰かに突然『ではカエルを描いてみてください』と白い紙と鉛筆を手渡されたらどうだろう。 己の脳内で記憶を手繰り寄せ、ゼロから形にする作業。 そこにはおのずと描いているその人自身が浮かび上がってくる。

この本には、与えられたお題を記憶のみに頼って描かれた絵が名前、年齢と属性だけで陳列されており、なかなかみられない他人の頭の中をのぞき込むことができる。 そこには体裁もなにもない。ただただ描いた人の記憶力、洞察力と個性がある。

『記憶スケッチアカデミー』理事長のナンシー関氏はいうまでもなくスペシャルな洞察力とコメント力の持ち主である。 本書では彼女の才能が本来の土俵のテレビを飛び出して市井の人々へと発揮されている。 彼女のコメントはここでも鋭く優しく面白い。ユーモアある慈愛とでもいうのだろうか、だからといって湿度が高くない。痛快なPOPさがある。

各項目の最後にナンシー関氏による各お題の記憶スケッチがあるのだが、当たり前だがヒジョーにうまい。 本当に稀有な才能をお持ちの人だったんだなぁと感動をおぼえる一冊である。