鰐とリボン

「肩肘はらずいつのまにやらいかず後家な40代」が本を紹介するブログです

だれも塞いでなんかくれない

対談を読むのが好きだ。特にモノローグ(作品)がイイ作者どうしの会話は絶対面白い。

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「淑女のはらわた 二村ヒトシ恋愛対談集」, 二村 ヒトシ (著), 犬山紙子 (著), 小明 (著), 川村エミコ (著), まんしゅうきつこ (著), 荒牧佳代 (著), はあちゅう (著), ジェーン・スー (著), 洋泉社

これはAV監督(といっても本しか読んだことがない。スミマセン)の二村ヒトシ氏と淑女七名による、監督の場数に裏打ちされた心理カウンセリング的インタビュー集である。登場するのは犬山紙子、川村エミコ(たんぽぽ)、小明、まんしゅうきつこ、荒牧佳代、はあちゅう、ジェ-ン・スー(敬称略)。なかなか豪華なラインナップだ。

監督の問いかけに「そうなんです!私はこうなんです!」とぐいぐいのっちゃう人はいつのまにか監督の掌の上でコロコロ転がされている。若さゆえ~♪かもしれないが、もともとの素質も素直なのだろう。さすが監督、プロだなぁ~!と思わざるを得ない。

ただ、監督も巻頭で認めているように、まんしゅうきつこ氏とジェ-ン・スー氏にその術は通用していない。監督のほうがかえって回答に翻弄されたり、感心したりしてしまっている。そこも面白い。このおふたりはすでに社会や性別のくびきから自由になっている。 ブッダの言葉「苦しみを消すには、自分自身を変えるしかない」。つまりもう変えちゃったあと。 彼女たちに世間一般の物差しは通用しない。幸不幸に意味などもはやないのである。二村監督がいうところの『誰しもが親に開けられた穴』を塞げるのは完璧な親ではなく、素晴らしいパートナーや友人でもなく、自分自身であるということを二人は教えてくれる。世の中には自己肯定を傲慢と考えてしまう人もいるようだが、真の自己肯定とは生きやすさの獲得である。

渋谷直角のカバーイラストもいい。主人公になりきれない自分。でもラスベガスのミュージカルであろうが、商店街の余興であろうが、舞台は舞台。そして誰しも人生という名の舞台の主人公だ。

女としての価値が高くないことで異性から搾取すらされなかったことと、愛されないことに関連性はない、ということをどう説明していいかわからない、と話すジェ-ン・スー氏。優しい。 「お前が愛されないのは搾取されるほどの価値もないからなんだよ!」という外野の罵声でどれくらいの夢が沈められてきただろうか。夢は夢なんだからいいじゃん。精神衛生上必要だもんね(当方オタクのイカズ後家なのでご安心を)。

自分がマグロの大トロだったら、生のままで美味しいし万人に愛されるだろう。だが、海鞘に生まれついたなら?下処理や料理にかなり時間がかかる。 搾取される、されないはそれだけの違いでしかない。だからマグロの大トロを目指すのか、あたしは海鞘だから珍味好きな人だけでいんだもん!と開き直るのか。ま、それもまたアリ。 ただし、海鞘好きを見つける旅は気が遠くなるほど長いかもしれないが。