〜日本昔ばなし くわず女房 (第一話)〜
食費がかからず働き者の嫁が欲しい男の夢は叶うのか?!
そんなお話の、はじまり、はじまり。
昔々、あるところに非常にケチな男がいた。
男は嫁が欲しかったが、女は大食らいで食費がかさむのがどうにも気にかかる。
男は仕事先の問屋どんにも「何も食わない女はいないだろうか」とたずね、
「そりゃ無理というものだよ」と呆れられていた。
どんなに呆れられても男はなかなかあきらめられなかった。
「この広い世の中、全く食わない女が一人くらいはいるはずだ」
そんな時、後ろからふわりと優しい声がした。
「もし、そこのおかた…」
振り向くと艶やかな女がすらりと立っていた。
「わたくし偶然、問屋どのとあなたさまの会話を盗み聞いてしまいました。何を隠そう、わたくしは飯を食わなくても平気な女でございます」
女はキラリと目を光らせ、男をじっと見つめてこう続けた。
「それだけではなく、よう働く女です。あなたさまの嫁にしてもらえませんでしょうか」