〜日本昔ばなし ちいちいこばかま (第八話)〜
ふるい物には魂が宿る…?!
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ちいちいこばかま 其の一
ちいちいこばかま 其の二
ちいちいこばかま 其の三
ちいちいこばかま 其の四
ちいちいこばかま 其の五
ちいちいこばかま 其の六
ちいちいこばかま 其の七
娘はあわてて、いつもお歯黒を塗り終わった楊枝をためていた椀をみてみた。
すると中は空っぽであった。お侍は頷いた。
「不要になった物を捨てずに長くそのままにしていると、いつのまにかそのものに魂が宿るとは聞いたことがある。付喪神(つくもがみ)というそうだが」
娘は顔を赤くした。
「では私が不精ゆえ、楊枝をこまめに焼き捨てていなかったから、あのものたちが出てきてしまったのでしょうか」
「まぁそんなところであろう」
お侍はそういうと少しほほえんだ。
「しかし、あのものたちはわたしの姿形を真似ていたのやもしれぬな。おもしろい」
その夜から、ぷっつりとあの化け物たちは現れなくなった。
娘はすぐに元通り元気になった。
そして自ら招いた付喪神(つくもがみ)にすっかりこりた娘は、掃除などの家事にも精を出すようになった。
天真爛漫で不精ぎみな性分は生涯を通してかわらなかったが、その後付喪神に出会うことはなかったそうである。
(了)