〜日本昔ばなし 河童のちえくらべ (第十話)〜
おじいさんが興味をもったこととは…?
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河童のちえくらべ 其の一
河童のちえくらべ 其の二
河童のちえくらべ 其の三
河童のちえくらべ 其の四
河童のちえくらべ 其の五
河童のちえくらべ 其の六
河童のちえくらべ 其の七
河童のちえくらべ 其の八
河童のちえくらべ 其の九
「イチ、サンには黙ってろと言っただろう」
ニイがイチに詰めよると
「黙ってたんだけど、サンにはすぐバレてしまったんだ」
イチはニイとサンを交互にみながら申し訳なさそうにこたえた。
サンはと言えば、ニイとイチの言い合いを意にも介さず右手をかばいつつ、ニイとおじいさんの間にグッと割って入った。
「おじい、ニイや俺たちをバラバラにしたい気持ちはわかる。が、今回は俺の手だけで勘弁してくれ。金輪際、おじいやアオには手を出さないから」
おじいさんは黙ったまま、サンを見ると鎌を片端に置いた。
そして荷袋の底から、油紙に包まれてもまだピクピク動いているサンの手を取り出すと、サンたちの目の前に差し出した。
「おじい、返してくれるのか?」
ニイが嬉しそうな声を出すと、おじいさんはうなずいた。
「今回だけはお前たちの仲の良さにめんじて返してやる。だが、もし次にアオやわしに手を出したら、その時は容赦はせんぞ」
手を取り合って喜ぶニイたちにおじいさんは続けた。
「それとな、さっき今ならばまだ間に合うといったな。その手当てをぜひわしにも見せてくれ」
「ほんとうは河童以外にはあまりみせたくはないんだが、今回は特別だ。ここで継ぐからみていてくれ」
イチはそういうとすぐに軟膏を取り出し、おじいさんの家の水桶の綺麗な水で自分の手とサンの手、サンの右手を継ぐ部分もよく洗った。
そしてたっぷりと軟膏をすくって鎌で切られた部分に塗り込み、サンの手を接木(つぎき)をするようにぴったりつなげた。
するとどうだろう。持ち主に帰った右手は嬉しそうにピンピンとはね、やがてサンの意志通りに動きはじめたのだった。
「うーん、こいつはすごい」
おじいさんはすっかり感心し、うなった。
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河童のちえくらべ 其の十一
河童のちえくらべ 其の十二