〜日本昔ばなし 河童のちえくらべ (第十二話)〜
河童の頭の皿はダテについてるわけじゃない!?
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河童のちえくらべ 其の一
河童のちえくらべ 其の二
河童のちえくらべ 其の三
河童のちえくらべ 其の四
河童のちえくらべ 其の五
河童のちえくらべ 其の六
河童のちえくらべ 其の七
河童のちえくらべ 其の八
河童のちえくらべ 其の九
河童のちえくらべ 其の十
河童のちえくらべ 其の十一
「しかし、おじい。あの薬は俺たちほどには人間にきかないぞ」
ニイが芋ようかんの残りをじっと見ながら言った。
「なるほど。どれくらいの傷なら効くんだ?」
「その昔、俺が薬の作り方を教わったときに聞いた話だが」
イチが記憶をたどるように小首を傾げた。
「人間の場合、刀傷ていどなら数日できれいに治るといっていた。ただし切りおとされた手をくっつけるのは無理だ」
「そうか。それでもたいしたものだ」
おじいさんは満足げにうなずいた。
「おじい。俺たちにとってやぶさかでない話だが、ただ他人の言うなりになるのはごめんだ。うまくいかなくなったときに他人のせいにしてしまうからな」
サンがぐいっと身を乗り出してそういうと、ニイとイチも大きくうなずいた。
「ふむ。なかなかの心がけだ。もちろん、おまえたちもいろいろな案をだせ。なにごとにも工夫がない毎日は生きた心地がしないからな」
おじいさんはすっかり感心したようだった。河童たちはまたピカピカっと嬉しそうに笑って、その日はねぐらに帰っていった。

それからというもの、河童たちは薬をつくってはおじいさんと町に売りに行ったり、きゅうり畑を手伝ったりするようになった。
尻子玉を取ろうとあれこれ作戦を立てたように、きゅうりをうまく育てる方法を考えたり、薬の効能の宣伝も楽しんでやるようになった。
ときどき思い出したようにアオの尻尾にちょっかいを出すことは忘れなかったが、、、尻子玉をつかむまではしなくなった。
そして三匹仲良く、きゅうりや芋ようかんをお腹いっぱい食べて暮らしたそうである。
(了)