〜日本昔ばなし 天狗のなやみごと (第三話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
ガキ大将とコテン、勝つのはどっちだ⁉︎
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天狗のなやみごと 其の一
コテンとガキ大将は組み合ったまま、しばらく動かなかった。
しかしふたりの体は小刻みに震えていて、力いっぱい押し合っていることがわかった。
いつ、この釣り合いが崩れるのか、皆が固唾(かたず)をのんで見守っていた。
やがてジリ、ジリとコテンが押され始めた。
高下駄を脱いだ素足が少しずつ土俵ぎわへと押しだされていく。
やはりこの勝負はコテンの負けか、と思われたその時、
「でやッ!」
ほんの少しの隙を突いて、コテンがガキ大将の脇の下にすべり込んだ。そして体をテコのように使ってガキ大将の体を思い切りよく上へ跳ね飛ばした。
次の瞬間、デン!という音とともにガキ大将は土俵の外に転がっていた。
「勝負あった!」
「コテン!なかなかやるじゃないか!」
「最初から大将を倒すなんてすごいぞ」
仲間に入れた上に大将に勝った嬉しさで、コテンは有頂天になった。
「なぁに、たまたま、たまたまだ」
そして大将が立ち上がるのに手を貸そうと駆け寄った。しかし、照れくさそうに頭をかいていた大将の目の色が、自分をみた途端にさっと変わったのがわかった。
あわてて手拭いに手をやると先ほどの勢いでめくれたのだろう、鼻のてっぺんがすっかりむき出しになっている。
(し、しまった!)
大将が後ずさるのと同時に、周りの子供らも騒ぎ始めた。棒切れを手に身構えるものまでいた。
「こ、こいつは天狗じゃ!」
「天狗じゃ!妖怪じゃ!うまいこといいおって、わしらを食いにきたんだ!」
「ち、ちがう!」
コテンは必死にいいつのった。
「とって食ったりなんてしない! お、おれはただ、おまえたちと遊びたいだけだ!」
しかし子供たちは皆、コテンをにらんで後退りすると、パッと蜘蛛の子を散らすようにあたりからいなくなってしまった。
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天狗のなやみごと 其の四