さまざまな日本の文化を紹介します。民話と3DCGの融合にチャレンジ中。

天狗のなやみごと 其の四(全十二話)

天狗のなやみごと

日本昔ばなし 天狗のなやみごと (第四話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
天狗の兄貴分タカオに諭されるコテンだったが…

最初から読みたい方はこちら↓
天狗のなやみごと 其の一

「だからいつもいってるだろう。人間なんかと仲良くしてもいいことなんかなにもないって」

村の子供たちと相撲をとった話をすると、タカオはそれみたことか、と息巻いた。

タカオはとなり山に住む兄貴分の天狗だ。こうしてたまにコテンを訪ねてやってくる。

なににつけても先輩風を吹かすので、コテンはタカオがすこし苦手だった。

「でも、おれの鼻がみえるまではみんな優しかったんだ」

コテンの反論に、タカオは薄目でコテンを見やると、おまえはなんもわかっちゃいないな、といったふうにゆっくりと左右に首を振った。

「このあいだなんかもな。おれの山近くの村を久しぶりにのぞいてみたら、ちょうどアジが大漁でな」

「そりゃよかった。今年は獲れないかもっていってたのにな」

「ああ。ぴちぴち跳ねたたっくさんのアジにみんなニコニコしててよ。それで思わずおれも村の人間たちに「すごいじゃないか」と声をかけてしまったのよ。それが運のつき」

そこでタカオは、ハーっとため息をついた。

天狗のなやみごと

「『おまえさんの羽団扇は立派じゃのう、ちょっこし、アジの干物をあおいでみてくれんかの』と村長にいわれて、よっしゃとあおいだら四半時(しはんとき)(約30分)ほどですぐに乾いたのよ。そしたら村人が我も我もと押しかけてきて、結局村中の干物を乾かす羽目になっちまった。全部終わったら、すっかり夜中だったぞ」

コテンは村中の干物を一生懸命あおいでまわるタカオを想像して、おかしくなった。やはりタカオには憎めないところがある。

「しまいには妖怪は疲れないから便利じゃのう、だとよ! そんなわけなかろうが。妖怪使いが荒いにも、程があらあ」

タカオはぶつぶつ一人ごちていたが、コテンはそれより人間と話せているタカオがうらやましかった。

「やっぱりタカオだって人間と仲良くしたいんじゃないか」

「うっ」

タカオは目を白黒させた。

「まぁ、あいつらは、その、うん。かわいいところもあるからな」

「タカオはなぜ普通に村人とはなせるのに、おれはだめなんだろう」

しょげるコテンに、タカオはうーん、と首をかしげた。

「下手に天狗であることを隠さない方がいいかもな。腹黒妖怪は姿を隠して近づいてくると聞くぞ」

「なぁんだ、そんなことか」

コテンの顔が明るくなった。

「今度はおれもタカオ兄貴を見習って、このままでいくことにしよう」

続きが読みたい方はこちら↓
河童のちえくらべ 其の五