〜日本昔ばなし 天狗のなやみごと (第七話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
無事、父親と背負いカゴを送り届けたコテンだったが…
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天狗のなやみごと 其の一
父親はかなり重く、まるで漬物石で上から押さえ込まれているようだった。
さすがのコテンも頭がクラクラして何度も落下しそうになったが、どうにか持ちこたえた。
子どもは、と目を凝らすとくねくね曲がった山道をリズミカルに駆け降りていくのが木々のあいだ越しに確認できた。
やがて村につくとコテンは父親を家の前で下ろすと、すぐに山へと戻った。
そして荷を届けにまたふたりの家の前に降り立った。
家の中から父親を気遣う子どもの声が聞こえてきたのでコテンはほっとした。
「もし、荷を届けにきたぞ」
するとガラリと戸が開き、母親らしき人が出てきた。
「おや、妖怪がなんの用だい」
その表情や声が思いのほかトゲトゲしいので、コテンはおどろいた。それにいくらなんでもこの仕打ちはあんまりではないか。
「さ、さっき、山から怪我人を送ったものだ。約束通り荷を届けに来た」
「そうかい。そりゃ、ご苦労なこった」
母親はぶっきらぼうにそういうと、乱暴な仕草でコテンから背負いかごを奪いとった。
そしてすぐに戸を閉めようとするので、コテンはあわてて言葉をかけた。
「怪我の具合はどうだ。かなりひどいようだったが」
母親は子どもと同じ目でコテンをじろりと睨んだ。
「どっちにしろ、あんたの心配にゃ及ばないよ」
そして、ピシャッと戸を閉めてしまった。
コテンは呆気に取られ、しばらく立ち尽くしていた。
もうあたりはすっかり暮れていた。コテンは訳がわからぬまま、しょんぼりと山へ帰るしかなかった。
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天狗のなやみごと 其の八