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天狗のなやみごと 其の十(全十二話)

天狗のなやみごと

日本昔ばなし 天狗のなやみごと (第十話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
タカオのもとへと急ぐコテンと長助だったが…

善は急げ、とばかりにコテンは長助をおぶると、羽団扇で飛びたった。

(やはり子どもは軽いなぁ!)

怪我をしていたということもあるだろうが、昨日の父親の重さに比べると長助は小鳥のように軽かった。

長助は、といえば最初こそ怖がっていたが、天空からの見晴らしの良さにだんだんとはしゃぎはじめた。

「あれ、村がこんなに小さく見える。すごいすごい。コテンはいつもこんな景色を見ているのか」

長助の言葉に、もともと高いコテンの鼻先が嬉しさで伸びてきた。

「まぁな。おれも空を飛んでいる時がいちばん好きだ。また飛びたくなったら、いつでも来い。乗せてやるぞ」

「うん!」

長助は嬉しそうにうなずいた。

天狗のなやみごと

やがて、タカオの守るとなり山が見えてきた。

山肌に近づいたとき、コテンと長助はハッとした。

山の中腹に新しい小屋があり、その横には物干し竿が何本も並んでいる。

そしてなにより、いちめんの藍。そこには、何枚もの藍色の布が干してあったのだ。

近くに人影も見える。タカオと、そばにもう一人…。

「ばあちゃんだ!」

長助が叫んだ。その声は喜びでキラキラしていて、コテンはほっとするのと同時にまた嬉しくなった。

「にしてもやっぱり、タカオの仕業か」

そして、コテンは羽団扇を振ると、ゆっくりとふたりのもとに降りていった。

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