〜日本昔ばなし 天狗のなやみごと (第十二話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
藍のうつくしさに感心するコテンと長助だったが…⁈
それからコテンと長助は藍染の手順を見せてもらったり、ばあさまが作った着物を着せてもらったりした。
藍色の布は見目がうつくしいだけでなく、着心地もふんわりと気持ちよかった。
ひととおり見せてもらってから、ばあさまに長助が切り出した。
「ここまでやるなんてすごいよ、ばあちゃん。でも父ちゃんや母ちゃんはただ反対してるんじゃないよ。ばあちゃんを心配しているんだよ。去年腰を痛めたろう。そのうえ新しいことなんてやったら大変だ、と思っているんだ」
「わかっているさ」
長助の言葉にばあちゃんはうなずいた。
「ありがたいと思っているよ。しかし長助、家族にやりたいことをとがめられた時、やめたほうがいいと思うかい」
長助はウーン、と考え込んだ。
「どうだろう…。おれはまだ子どもだからな。考えが足らないところもあるだろうな」
「いいかい、おぼえておいで。自分でようく考えて出した答えだったら、家族の言うことを聞かなくていい時だってあるんだよ」
ばあさまの口調は少しつよくなったが、長助を見る目は相変わらず優しかった。長助は素直にうなずいた。
「それにばあさまは、もうこの年だ。やりたいことをやったほうがいいと、おれも思うぞ」
口の悪いタカオがまぜっ返すと、ばあさまはアハハ、と笑った。コテンはタカオのこんなところが好きだ、と思った。
「ばあちゃん、タカオ。また長助と遊びに来てもいいかい。そして藍染を手伝ってもいいかい」
タカオとばあさまはもちろん、とうなずいた。
「まだまだやらなくちゃいけないことはたくさんあるからな」
コテンはなんだかワクワクしてきた。
「じゃあ、とりあえず、ばあさまの無事を長助の家族に知らせに行ってくるぞ」
そして長助とふたり、羽団扇をあおいで、空へと舞いあがった。
(了)