〜日本昔ばなし 妖怪皮算用(ようかいかわざんよう)(第三話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
方法がとうとう見つかった。これぞ灯台下暗し?
あくる日のこと。最近元気がない男のことを気づかって、村人が綺麗に咲いた朝顔を差し入れてくれた。
男の妻はたいそう喜んでいたが、男は気が塞いでいたので生返事しかできなかった。
「おまえさま、なんだか顔色まで悪いような。お医者にかかったほうがいいのでは」
「いや、大丈夫だ」
男は福々しいつくりに似合わない、妻の心配そうなお多福顔をみているうちに、ふいに今の悩みを打ち明けてみたくなった。
元来、妻は自分より世知長けて肝がすわっているときている。
「じつはな…」
男は最近老いをはっきり感じ、どうしても死にたくないと書物にたよってはみたが、糸口がまったくみつからないことを初めて口に出した。
妻は真剣にきいていた。
「私が言うことを馬鹿馬鹿しいと思わないのか」
てっきり笑われると思っていた男が少し驚いてそう続けると、妻は相変わらず真面目な顔でこう言った。
「馬鹿馬鹿しくなんてあるわけがありません。いつもは忘れているだけで、命ある者は皆、いちどは考えたことがあるはずです」
それから急に声をひそめてこういった。
「そういえば、確かな話かはわからぬのですが…。昔、妖怪になれば死ななくてすむ、と噂で聞いたことがあります」
「なんと」
男は驚いた。探していた答えがこんな近くにあったとは。
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妖怪皮算用(ようかいかわざんよう) 其の四