〜日本昔ばなし 妖怪皮算用(ようかいかわざんよう)(第八話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
無事、次の妖怪に出会えた二人だったが…?!
雲は木々の間をぬってジグザグに動きながら、見上げている男と妻の頭上までおりてきた。
「あっ」
雲の上にはしわくちゃで耳の尖った、そのくせ目だけは爛々(らんらん)と光った老婆が座っていた。
(これが噂には聞く山姥(やまんば)か)
河童たちはいたずら好きで村にもよく出没していたから、その姿はよく知っていたが、二人は山姥(やまんば)に会うのは初めてだった。
山姥は男と妻の心を見透かしたように、ドスのきいた低い声でこう言った。
「そうだ、わしが山姥(やまんば)だ。道に迷っているようだからおりてきてやったぞ。雲に乗せてやるからこっちに来い」
そういうと二人の答えも聞かず、ぐいっと手を引っ張った。すると雲はまるで生きているかのように二人に合わせてググッと大きく広がった。
三人を乗せた雲は山の上空へとどんどんあがっていった。すると先ほどまで迷っていたのが嘘のように森や山々が見渡せ、逃げてきた河童沼やその先に二人が住む村がみえた。
「な、なんと! 助かった! あ、ありがとうございます!」
二人の安堵(あんど)した言葉や表情に、山姥(やまんば)はおよそ似つかわしくない優しい目つきになった。
「して、なぜお前たち、こんなに山深くへ分け入ってきた。ここいらは妖怪たちの住処ぞ。まるで喰ってくれといわんばかりだ」
二人の顔がさっと青ざめると、山姥(やまんば)はたのしそうにカラカラと笑った。
「安心しろ。わしは今、腹が減ってはおらん。まずは理由を教えろ。そなたらのような年寄りがなぜこんなところにいるのか、理由が知りたいだけじゃ」
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妖怪皮算用(ようかいかわざんよう) 其の九 準備中