〜日本昔ばなし 妖怪皮算用(ようかいかわざんよう)(第十話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
道標(みちしるべ)とともに閻魔大王のもとへと急ぐ二人だったが…⁉︎
山姥(やまんば)の髪は受け取ったとたん、ピンと糸を張ったようにまっすぐになり、持ち主をある方向へグッと引っ張った。
どこを向いても方位磁石のごとく同じ向きを指し、その方向へと導かれる。
「これでもう迷うこともなかろう。ここから閻魔大王(えんまだいおう)のいるところまでは半日もかからぬ」
山姥(やまんば)がさっと手を振ると、三人を乗せた雲は山の木々の間をジグザグとぬって降りていった。
男と妻を地面に下ろすと、
「道中の無事を祈っておる。達者でな」
山姥(やまんば)はそういってニカッと笑い、瞬く間にどこかへ飛んでいってしまった。
「気持ちの良い妖怪でしたねぇ」
妻が言うと、男も
「まったくだ」
と頷いた。
「それにしても、もし私が妖怪になれたなら、どう変わってしまうのだろうか」
歩きながら二人でしばらく考えたが、まったく想像がつかなかった。
「とにかく閻魔大王に会いに行こう。話はそれからだ」
しばらくのあいだ二人は黙々と歩み続けた。このような急ぐ旅でなければさぞかし、と思われる美しい景色も通り過ぎた。
やがて雨が降ってきた。二人は大きな岩の陰で雨宿りをし、手包の中の握り飯を食べ、竹筒の水で喉をうるおした。
雨が弱まり再び歩き出そうとしたが、今になって忘れていた疲れがどっと押し寄せてきた。
「もう少しだけ休んでからにしようか」
「そうしましょう」
男と妻は少しの間だけ、と目を閉じた。
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妖怪皮算用(ようかいかわざんよう) 其の十一 準備中