〜日本昔ばなし 妖怪皮算用(ようかいかわざんよう)(第十二話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
目覚めてみるとそこにはうつくしい命の恩人が…⁉︎
「イテテテ…」
まず痛みで目が覚めたのは男の方だった。どうやら頭をどこかへ打ちつけたようだった。それ以外にもそこかしこに鈍い痛みがある。
だが、痛む場所には薬草をあてがった布が巻かれており、頭は濡れた布で冷やしてあった。そして自分の傍には同じように手当てをされ寝息をたてている妻の姿があった。
「おい、おい」
妻を揺すると、
「うーん。もう朝ですか」
と寝ぼけている。しかし怪我はひどくないようで男は安心した。
それにしても、ここはどこだろう。少し離れたところでボウと蝋燭らしき明かりが揺れている。
二人の蓑と笠も、きちんと壁にかけられ、乾かされていた。
「目を覚まされましたか」
ゆらめく蝋燭と共に誰かがしずしずとやってきた。近付いてきてわかったことだが、こんな山奥に似つかわしくない、若くうつくしい女だった。
年は25、6の頃合いだろうか。薄暗がりの中、瓜実顔にクッキリとした切長の目が優しく微笑んでいた。
「お二人はこの近くの谷底で気を失っていたんですよ。あのままにしておいたら命も危なかったでしょう」
「岩場で足を滑らせてしまったのです。私たちを救ってくださったのはあなたさまですか。なんとお礼をいってよいか」
男も妻も恐縮して姿勢を正そうとしたが、アイタタタ、、と痛みに顔をしかめた。
「まあまあ、ご無理なさらず。困ったときはお互い様ですもの」
そういうと、女はホホホと笑った。
「ゆっくり休んでくださいね。もう少ししたら母と夕餉の準備をいたしますので」
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妖怪皮算用(ようかいかわざんよう) 其の十三 準備中