〜日本昔ばなし 妖怪皮算用(ようかいかわざんよう)(第十三話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
いつもはつらつな妻が静かな時はなにかある⁉︎





女が向こうへ行ってしまってから、妻がいつになく静かな口調でこういった。
「おまえさま。なにかおかしいと思いませんか」
「なにがだ。どこか痛むのか」
「ちがいます。あの娘ですよ」
男がいぶかしげに首をかしげると、妻は低い声でこういった。
「あのものはおそらく人間ではありません」
男は驚いた。
「我々の命の恩人に何を言い出すのだ」
「気づかれなかったのですか。体に合っていない着物の丈からたくさんのすね毛や曲がった大きい爪が出ているのを。見よう見まねで娘に化けているのでそこまでは気が回らなかったのでしょう」
「なんと。全く気づかなかったぞ」
妻はいつになく真剣な眼差しでこう続けた。
「助けてくれたのは本当でしょう。ありがたいとも思います。でも、おそらくなにか恐ろしい魂胆があるのでしょう」
「なぜそう思う」
「あのような形で現れたからです。やましい気持ちがあるものは、相手が望む、いちばん好ましい姿を知っています」
男はゾッとした。確かにそうだ。髭だらけの大男だったり、偏屈そうな老婆だったりしたら、自分ももっと警戒したのではなかったか。
「確かにおまえのいうとおりだ。ばれていないと油断しているだろうから、この隙にどうにかして正体を確かめよう」
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妖怪皮算用(ようかいかわざんよう) 其の十四