〜日本昔ばなし 妖怪皮算用(ようかいかわざんよう)(第十七話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
絶体絶命のピンチ到来…⁉︎
やはり赤鬼兄貴は弟分よりだいぶ迫力がある。
男と妻はその眼力に縮み上がったが、ここで引き下がるわけにはいかなかった。もう自分たちにもあとがない。
「こ、これは私たちが仕留めた鬼たちのヘソなのです」
鬼たちが怯え、逃げてくれるかもしれない。一縷(いちる)の望みにすがりながら、男は甘納豆を見せた。
しかし赤鬼は怯えるどころか、そこからひとつをヒョイ、とつまみポン、と口にほうり込んだ。
「うむ、こりゃうまい」
すぐに若い方の女、もとい青鬼も手を出した。
「まぁ、ほんとうね。美味しいわ、お母様」
そんな能天気な青鬼を赤鬼はジロリ、と睨むとゆっくりと息を吐きつつ男と妻を見据えた。
「しかし、な。これは鬼のヘソではないぞ」
男と妻は血の気が引く思いだったが、言い張った。
「いえ、本当でございます、本当に、私たちが仕留めた鬼たちの…」
そんな弁明にも赤鬼は全く耳を貸さず、
「ええぃ、しゃらくさい。それはな、おれたちが鬼だからよ」
と吠えた。その勢いとともに、ムクムクと本来の鬼の姿が立ち現れた。合わせたように娘の方も青鬼に戻っている。
「夜まで待ってやろうと思っていたが、もう待ちきれん。食ってやる!」
そして、妻が泣きながら追いすがるのをはらいのけ、赤鬼は男をつまみあげた。
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妖怪皮算用(ようかいかわざんよう) 其の十八