〜日本昔ばなし ぶつくさ太郎と一つ目小僧(第一話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
ついつい、ぶつくさいっちゃう。そんな子のおはなしのはじまりはじまり!
昔々、あるところにいつも細かなことが気になってしょうがない子どもがいた。
気づいたことをひっきりなしにぶつぶつとつぶやくので、名前の太郎と合わせて皆からぶつくさ太郎、とあだ名をつけられていた。
太郎はまだ数えで十(とお)であったが、すでに自分の中になにか強固な芯のようなものがあった。
どんなにちいさなことでも、おかしいと思ったら納得するまで追いかける。
今日も今日とて、寺子屋で先生を問いつめていた。
「先生! なぜ私の書にだけ、このような赤がはいっているのでしょうか」
ほかの子どもたちは、またはじまった、と肩をすくめ、先生はいつものことかと動じない。
「そのように書いた方が正しい形だからだ」
「でも」
太郎はあきらめず、となりの子の書を指差す。
「こちらも同じような形ですが、赤がはいっておりません」
先生はチラリと見たあと、しまった、と思ったが、いまここで認めるのはバツがわるいので誤魔化すことにした。
「重吉の方はギリギリで合格だ」
しかし、太郎にはつうじない。
「ほんとうですか。たまたま入れた赤だから、統一されていないのではありませんか」
はっきりいいあてられて、先生は不機嫌になった。
「まだ書の細かな良し悪しがおまえにはわかるはずはない。きょうはここまで!」
そしておもむろに立ち上がり、どすどすと奥へにひっこんでしまった。
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ぶつくさ太郎と一つ目小僧 其の二