〜日本昔ばなし ぶつくさ太郎と一つ目小僧(第二話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
世渡り上手・重吉の忠告に従うべきか⁉︎
その日の寺子屋からの帰り道。太郎が歩いていると、重吉と八郎が寄ってきた。
「おい、太郎。今日も余計なことを言って先生に叱られたな」
にやにやしながら重吉がいってきたので、太郎は顔色ひとつ変えず答えた。
「思ったことを言ったまでだ。それに先生だって、私のいったことが正しいとうすうす気づいていたはずだ」
「それが余計ってことよ。だいたい、生徒の前で指摘をうけるのがおもしろいわけなかろう」
太郎は目を細めて重吉を見た。重吉は大人の振る舞いをじょうずに真似ることこそが大人になることだと思っている節がある。
「なにごとも、相手の気持ちを読め、気持ちを。そしてそれにそわない言葉をいうのはまずいぞ」
またはじまった、と太郎は思った。ありきたりでつまらんことをいうやつだ。
「相手がお客であればそれもわかるが、学問の場でそんなことをやったらおかしいだろう」
「同じことよ」
重吉の鼻の穴は得意げにふくらんだ。
太郎はふたりの方を見ず、
「寺子屋に通い出したとき、先生はなんでも話しあい、ともに高めあっていこうとおっしゃった」
といった。
太郎の前を歩いていた重吉はそれをきいて、またにやにやしながら振り返った。
「太郎よ、そんなことをいちいち本気にしているようでは、な。なぁ八郎。おまえもそう思うだろう」
八郎はいつも重吉のいうなりである。
「うん。そうだな」
「まぁ、人心掌握(じんしんしょうあく)、がだいじ、ということだ。お前もせいぜい精進しろよ」
そして二人は笑いながら駆けていってしまった。
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ぶつくさ太郎と一つ目小僧 其の三