〜日本昔ばなし ぶつくさ太郎と一つ目小僧(第十話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
伝右衛門のもとを訪ねる一つ目小僧とからかさ小僧だったが…⁈
一つ目小僧とからかさ小僧は伝右衛門の長屋につくと、入り口の戸を少しだけ開け、なかを覗きこんだ。
伝右衛門と太郎がなれた手つきで傘を貼っているのがみえる。このまま、しばらくようすをみる予定だったのが、
「なんだ、やはり伝右衛門はまだ童(わらし)ではないか」
からかさ小僧がそうささやくので、一つ目小僧が
「いや、そっちは太郎だ。伝右衛門はおとなのほうだ」
とこたえたとたん、
「なんと! あの爺のほうか!」
驚いたからかさ小僧が大声をだした。と同時になかのふたりがびっくりしたようにこちらを振りむき、伝右衛門の目が嬉しそうに光った。
「からかさどの! からかさどのではないですか! そして太郎のご友人の一つ目どのですね!」
もうこうなってはしかたない。トコトコとなかに入るふたりを、童に戻ったかのような笑顔の伝右衛門と、太郎が出迎えた。
「久しぶりだな。伝右衛門。すっかり貫禄がついたなぁ。技の習熟ぶりをみにきてやったぞ」
「なんと親切な。ぜひまたご指南ください」
それからからかさ小僧は半刻ほどかけ、伝右衛門の手しごとをじっくりとみた。そして
「うむ、やはりおぬしの腕はたしかだ。教えたとおりのやり方を守っておる。糊もケチってはおらぬ」
満足そうにそういったので、伝右衛門も嬉しそうにうなずいた。
「からかさどのの太鼓判に勝るものはありません」
太郎もほっとして微笑んだ。しばし穏やかな時がながれたところで、一つ目小僧が目をくるりとまわし、いたずらっ子のような顔つきになった。
「やはり重吉の御託(ごたく)とわかったところで、やつをどうにかしてこらしめねばなるまい」
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ぶつくさ太郎と一つ目小僧 其の十三