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ぶつくさ太郎と一つ目小僧 其の十三(全二十四話)

ぶつくさ太郎と一つ目小僧

日本昔ばなし ぶつくさ太郎と一つ目小僧(第十話) 文・絵 ムトゥチズコ〜

姉が借りた傘を返しにいく重吉だったが…⁈

ぶつくさ太郎と一つ目小僧
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あくる日のこと。出かけようとしている重吉の後ろ姿に、奥の部屋から姉のお美代が声をかけてきた。

「重吉、寺子屋へは越後屋のまえをとおるだろ。借りた傘を返してきておくれ」

みると入り口に大きな番傘がたてかけてある。重吉は一瞬、面倒くさそうな顔をしたが、すぐに

「はい、姉上」

と素直に傘を手にとり家を出た。歩きながら重吉は

(たしか姉上はこれから歌舞伎を観にいくはずだ。この使いの駄賃になにか買ってきてくれるかもしれないぞ)

そんなことをちゃっかり考え、にやりとした。

やがて雨が降ってきた。

こりゃちょうどいい、と傘をひらくと、真ん中のあたりが大きく破れている。

「なんだ、役に立たないじゃないか」

重吉ががっかりしていると、

「ちょうどよかった。いれてくれ」

と八郎が傘に入ってきた。

「おや。こんなに破れているじゃないか、まだ新しいのに」

「そうなんだ。姉上が越後屋で借りた傘なんだが、これも伝右衛門たちが貼ったものかもしれないな」

そのとたん、さしていた傘がバチン!と閉じ、二人の頭は傘の中に閉じ込められた。

「な、なんだ?」

もがいていると、上のほうから大きな声が響いた。

「なんだかんだといいかげんなことをいいおって!こうしてくれる」

しだいに傘の閉じる力が強まっていく。

「いでででで!」

「前が見えない!」

しかも傘はひとりでに動きだしたので、ふたりはつられてよろよろと歩きだすしかなかった。

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ぶつくさ太郎と一つ目小僧 其の十四