〜日本昔ばなし ぶつくさ太郎と一つ目小僧(第十五話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
一つ目小僧たちにこらしめられた重吉と八郎だったが…⁈
「もっとなにか深いたくらみがあるのかと思っていたが」
そういうと一つ目小僧はあらためて重吉の方に向き直った。
「重吉。おまえはなかなかに知恵がまわる。しかし、だからといってすべて己(おのれ)に都合がいいように根回ししちまうってぇのはよくないぞ」
そしてじっと重吉をみた。
「いま、おまえが真似ているおとなにほんとうにじぶんがなりたいのか、いっぺん、よく考えてみろ」
重吉はだまっている。
「おまえがなりたい人間になればいいんだ。ま、もし妖怪になりたいっていうならそれも歓迎だがな」
そして一つ目小僧はニヤリと笑い、からかさ小僧に目配せするとすっと右手を挙げた。
あたりはふっと明るくなり、気づくと重吉と八郎は元いた場所にふたりだけで立っていた。雨もすっかり止んでいる。
「いやぁ、まいったな。いまのはいったいなんだったんだろう」
八郎は喉元過ぎればなんとやらで、急に勢いよく話しはじめたが、重吉はだまったまま寺子屋へ歩きだした。
部屋で勉強の支度をしていると、太郎がやってきた。
八郎が
「おい、太郎。お前のせいでひどい目に…」
と声高にいいかけたのを、重吉が
「おい」
と止めたので、八郎はだまった。
そして、三人はそれぞれ、自分の勉強をはじめたのだった。
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ぶつくさ太郎と一つ目小僧 其の十六