〜日本昔ばなし ぶつくさ太郎と一つ目小僧(第十七話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
はからずも噂の真実を知った重吉だったが…⁈
おなじ頃、重吉が家に戻ると、ちょうど姉のお美代が出かけようとしているところだった。
越後屋の貸し傘を手にしていたので、
「姉上。けさ、私が言いつけどおり返しにいったのに、ほかにも借りていたのですか」
とたずねると、
「なんのことだい。きょうは重吉が出かける前に習い事にでかけたけれど」
と首を傾げる。
(じゃあ、今朝の姉上の言いつけも一つ目小僧のしわざだったのか)
練れた妖怪は声色を真似るのもうまいと聞く。そこからか、と重吉が考えていると、
「いやぁ、また降り出してきましたよ」
と番頭が手拭いで頭を拭きながら店に飛び込んできた。しかし手には傘がある。
「せっかく準備万端と持ってでたのに、開いたら傘が破れていたんでさぁ」
それを聞いてお美代も
「まぁ。私もこのあいだ、同じ目にあったのですよ」
とうなずいた。すかさず重吉が
「やはり伝右衛門さんのところに頼んだからかい」
と息巻いてたずねると、若番頭は
「いや、それなら安心なんですよ、ぼっちゃん。伝右衛門さんとこは安い上に腕も確かだけど、順番待ちでね。他に頼んだんですが、そこの仕上がりが良くないんでさ」
とこともなげに答えた。
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ぶつくさ太郎と一つ目小僧 其の十八