〜日本昔ばなし ぶつくさ太郎と一つ目小僧(第十四話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
重吉と八郎が目をあけるとそこは妖怪たちのひみつの場所だった…⁈
閉じ込められていた傘がようやくひらいたので、重吉と八郎はよろけて尻もちをつき、目をあけた。あたりは薄暗く、いったいどこにいるのか、見当もつかない。
ひとまず互いの無事を確かめ、
「やれやれひどい目にあった…」
と顔をあげたふたりは、おそろしさにおののいた。すぐ目の前で一つ目小僧が仁王立ちで自分たちをにらみつけていたからである。
「ここはわれわれ妖怪たちしか入れないひみつの場所だ。逃げられないうえに嘘もつけんぞ。なぜ証拠もないのに、破れる傘はみな伝右衛門たちのせいと決めつけた」
ふたりがおそろしさに声を出せないでいると、一つ目小僧はますますいきりたち、いつもの子供のような顔つきからは想像もつかない凄みのある表情へと豹変した。
「だまっておらず、こたえろ」
「か、勝手にきめつけたわけじゃない。聞いたんだ」
重吉の声は震えていたが度胸はあるようで、はっきりと答えた。三郎はといえば、ただ震えているのみである。
「うちの店の者がいっていたんだ。越後屋は貸し傘の修繕をここらでいちばんはやくて安いところに頼んでるって。そんなところは伝右衛門のところしか思いあたらない」
からかさ小僧もかぶせるように問いつめた。
「じゃあ、たしかめもせず、それだけで決めつけたのか」
「だってそうとしか考えられない」
重吉はいつもの調子が戻ってきたようで、自分はまちがっていない、といわんばかりに堂々とこたえた。三郎も頷く。
その答えをきいた一つ目小僧はふう、とため息をつくと、
「ふむ。そんな考えでいったことか。らちもない」
とシュルシュルといつもの柔和な顔つきに戻った。
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ぶつくさ太郎と一つ目小僧 其の十五