〜日本昔ばなし 天狗のなやみごと (第十一話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
タカオと長助のばあちゃんを見つけたコテンたちだったが…
「あちゃー、みつかっちゃった」
「長助!天狗に連れてきてもらったのかい。ようきた、ようきた」
駆け寄るコテンたちをみてタカオはバツが悪そうに肩をすくめ、ばあちゃんはうれしそうに笑った。
「ばあちゃん!なぜ何も言わずに出て行ったんだい。天狗に連れて行かれたから、てっきり喰われたんだと皆うわさしているよ」
そんな長助の言葉に、タカオは憮然(ぶぜん)とした。
「失礼だな。おれは人間なんて喰わんぞ」
「そういうことじゃないだろう、タカオ。ばあさまがここにいることを、なぜ長助の家にしらせなかったんだ」
コテンがあきれてタカオに詰めよると、ばあさまが割って入った。
「わしが頼んだんだ。タカオはちっともわるくない」

「どういうこと?ばあちゃんは家が嫌になったってことかい?」
長助がたずねると、ばあさまは首を振った。
「嫌になってここにきたんじゃない。やりたいことがあってきたのさ」
そういうと干してある藍染の布を指差した。
「どうだ。うつくしいだろう」
晴れた空のもと、山藍で染めた布がさざめく波となり頭上を舞っている。確かにうつくしかった。コテンと長助はうなずいた。
「タカオの山の藍の葉で染めたんだ。いずれは自分で藍の種を蒔き、育て、山で摘まずとも染め物が作れるようにしたいのさ」
「それをおれが手伝ってるってわけ。なにせ力仕事も多いもんでな」
タカオがそこでぐいっと身を乗り出してきた。
「おれは儲けるために精を出す人間が好きでね。朝晩、家からここまで送り迎えしてもいいとばあさまにも言ったんだが、家族に反対されるから、と。売って最初の儲けを出して戻りたい、といってきかないんだ」
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河童のちえくらべ 其の十二