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天狗のなやみごと 其の六(全十二話)

天狗のなやみごと

日本昔ばなし 天狗のなやみごと (第六話) 文・絵 ムトゥチズコ〜

素の姿で二人の前へと飛び出たコテンだったが…

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天狗のなやみごと 其の一

すぐに子どものほうがコテンだと気がついた。

「おまえは、こないだの相撲の時の…」

子どもは身構えたが、父親の方は足の痛みでそれどころではないようだった。

コテンは歩み寄り、父親の怪我をじっくりと見た。

「ひどい腫れようだ。山を歩いて降りるのは無理だろう」

子どもはひどく怯え、キーキーとかみついてきた。

「ほっといてくれ。弱みにつけこむ気だろうが、そうはさせないぞ」

天狗のなやみごと

「そんなつもりはない」

コテンが低い声とともにじろりと見やると、子どもはすぐにだまった。コテンは父親に話しかけた。

「おれの羽団扇で家まで送ってやる。ただ、おれは小柄なもんで飛んでいる間かなり揺れる。頑張ってつかまれるか」

父親はうめきながら頷き、

「すまんが頼みます」

と小さい声を出した。コテンは頷くと、まだこちらをジトリと睨んでいる子どもに

「おまえさんは一人で降りられるな。上から見ててやるから駆けてゆけ。山の夜は早いぞ。荷はあとで届けてやる」

そういって羽団扇を出し、父親をおぶってザッと大地を蹴った。

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天狗のなやみごと 其の七