〜日本昔ばなし 天狗のなやみごと (第六話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
素の姿で二人の前へと飛び出たコテンだったが…
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天狗のなやみごと 其の一
すぐに子どものほうがコテンだと気がついた。
「おまえは、こないだの相撲の時の…」
子どもは身構えたが、父親の方は足の痛みでそれどころではないようだった。
コテンは歩み寄り、父親の怪我をじっくりと見た。
「ひどい腫れようだ。山を歩いて降りるのは無理だろう」
子どもはひどく怯え、キーキーとかみついてきた。
「ほっといてくれ。弱みにつけこむ気だろうが、そうはさせないぞ」
「そんなつもりはない」
コテンが低い声とともにじろりと見やると、子どもはすぐにだまった。コテンは父親に話しかけた。
「おれの羽団扇で家まで送ってやる。ただ、おれは小柄なもんで飛んでいる間かなり揺れる。頑張ってつかまれるか」
父親はうめきながら頷き、
「すまんが頼みます」
と小さい声を出した。コテンは頷くと、まだこちらをジトリと睨んでいる子どもに
「おまえさんは一人で降りられるな。上から見ててやるから駆けてゆけ。山の夜は早いぞ。荷はあとで届けてやる」
そういって羽団扇を出し、父親をおぶってザッと大地を蹴った。
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天狗のなやみごと 其の七