〜日本昔ばなし ぶつくさ太郎と一つ目小僧(第六話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
意外と皆、小さい頃に妖怪に会ったことがある…⁈
その日、太郎は父親の友人の伝右衛門さんのところで内職の手伝いをしながら、一つ目小僧の話をしてみた。
伝右衛門さんはあまり驚くこともなく、
「ほう、太郎もとうとう妖怪に会ったのか」
とたのしそうに目を細めた。伝右衛門さんは自分たちを子どもだからといって特別扱いせず、きちんと話を聞いてくれるので太郎は好きだった。
太郎の父親も伝右衛門さんも下級武士である。父親は御算用係(おさんよう係・今でいえば会社の経理担当)としてお城に出向いているが、その手当てだけではとても食べていけない。
そこで太郎もこうして伝右衛門さんのところで傘の油紙を貼り替える手伝いをしているのであった。
「えっ、では、伝右衛門さんも会ったことがあるのですか?」
太郎も興味津々である。
「うむ。ちょうど、太郎くらいの頃にな」
「それはどんな妖怪だったのですか」
「一本足のからかさ小僧だ。傘を届けるお使いの帰り道でな」
伝右衛門さんはなつかしそうだった。
「私の家は先代からずっとこの傘貼りの内職をしているのだが、小さい頃、私はいつもうまくできなくて落ち込んでいたんだ。そんなある日、突然からかさ小僧が目の前に現れて『お前の貼り方はなっておらん! 傘のことは傘こそわかる』、と上手なやりかたを根気よくおしえてくれたのだ」
「なんと親切な! 私もいつか、からかさ小僧におこられそうです」
太郎がそういうと、伝右衛門さんはハハハと笑った。
「太郎はもともと器用だし仕上がりもきれいだから、そんなことはないだろう」
太郎は大いに照れながらも嬉しかった。そして伝右衛門さんは油紙を貼る手を止めると、こうつづけた。
「妖怪というのは、なにかしら落ち込んだり迷ったりしている時に出てきてくれるのかもしれんな」
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ぶつくさ太郎と一つ目小僧 其の七