〜日本昔ばなし ぶつくさ太郎と一つ目小僧(第五話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
一つ目小僧は立ち直りがはやいヤツ…⁈





地面でひしゃげている豆腐を見て、太郎はオロオロしはじめた。
「どうしよう…どうしよう…」
もともと気が小さく、自分の失敗も許せない性分(しょうぶん)である。
(先生のことを責めていたけれど、これでは私のほうがよっぽど、すっとこどっこいだ。妖怪にまで迷惑をかけているじゃないか…)
今にも泣きだしそうな太郎をみて、一つ目小僧はしだいに落ち着いたらしかった。
「ま、これはおれの晩めしだったんだが、こうなったからにはしょうがない。これからおまえの家にいくぞ」
「えっ、いったいなぜ?」
おどろく太郎に、一つ目小僧はくるくるっと目玉を回し、ニヤリとわらった。
「決まってるじゃないか。かわりのものをなにかよこせ。それでなかったことにしてやる」
言われるがまま、太郎は一つ目小僧を家に連れて帰ることにした。
一つ目小僧は豆腐屋でときどき丁稚(でっち)たちにまじって手伝いをしているという。
「いつもはおからをもらえるんだ。けど、ほんとうにたま〜に豆腐があまるとくれるのさ」
「そんなたまの日だったのか。申し訳なかった」
「ほんとにそうさ」
やがて太郎の住んでいる長屋についた。朝炊いたお米がお櫃(ひつ)の中にあったので、太郎はおむすびをひとつ握り、一つ目小僧に手渡した。
「これでだいじょうぶかい」
一つ目小僧は嬉しそうに受け取ったが、そのあといぶかしげに太郎にたずねた。
「これはお前の夕餉ではないのか」
太郎はいおうかどうか迷ったが
「いいんだ。食べてくれ」
といった。それを聞いた一つ目小僧はなにか考えているようだった。が、すぐに
「それでは遠慮なくいただくぜ」
と帰って行った。
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ぶつくさ太郎と一つ目小僧 其の六