〜日本昔ばなし ぶつくさ太郎と一つ目小僧(第十話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
からかさ小僧を呼びだす一つ目小僧だったが…⁈





一つ目小僧は太郎とぶつかった道角まで戻ると、
「おい、からかさ小僧! 出番だ、でてこい」
と空に向かって呼びかけた。
ここはこの世の道と、目には見えないが妖怪たちだけがとおる道とが交差している場所なのである。
するとほどなく
「あいよ」
という声とともに、天からからかさ小僧が降ってきた。
「久しぶりだな、一つ目。妖怪が、なんかようかい、なんつって」
「ははは、元気そうだな、からかさ。ときに傘貼りの内職をしている伝右衛門を知っているか」
からかさ小僧はすぐに話にのってきた。
「知っているもなにも…おれが手取り足取り油紙の貼り方を教えたんだぜ。不器用だが一生懸命な奴だった。もういい青年になっている頃合いだろうなぁ」
「おい、そりゃいったい、いつの話だ。伝右衛門はたしか、とうに還暦をすぎているはずだぜ」
それを聞いたからかさ小僧は頭を振り、
「なんと! 毎度のことだが、人間どもの時間の速さにはどうもついていけん」
とため息をついた。一つ目小僧も頷いて、話をつづけた。
「じつはな。おまえさんを呼んだのも、最近、その伝右衛門の貼る傘の仕上がりが悪いと噂になっているらしいのだ」
それを聞いたからかさ小僧は息巻いた。
「んなあほな。そりゃわしに対しても失礼千万な話だ」
しかしすぐに肩、もとい傘をおとしてこういった。
「そんなはずがない、と思うが…しかしもう還暦を過ぎているのであれば、技も衰えているのやもしれぬ」
気落ちしたからかさ小僧をみて、あわてて一つ目小僧が
「まだそうと決まったわけではないぞ。これからいっしょに伝右衛門のところに確かめにいってくれるか」
といったので、からかさ小僧は力強く頷いた。そしてさっそくふたりは伝右衛門の家へと向かうことにした。
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ぶつくさ太郎と一つ目小僧 其の十二 準備中