〜日本昔ばなし ぶつくさ太郎と一つ目小僧(第十話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
太郎のぶつくさを聞いてくれた一つ目小僧だったが…⁈
重吉の話を太郎がしているあいだ、一つ目小僧は「ふむ」とか、「ほほう」などと相槌を打ちながら、おもしろそうに聞いていた。
ひととおり聞いたあと、
「そいつぁ、あれだな。“もうしっとる”病(やまい)ってやつだな」
といった。
「もうしっとる病?」
「まわりの大人の猿真似で、ひとより先になんでも知ってる気になる病のことよ。多分、重吉ってやつはほかのものより人どうしの駆け引きが目につく性分なんだろうなぁ」
そのとおりだ。重吉は面倒くさいが目端のきくはしこいやつだ、と太郎は思った。
「そういう者は太郎のような素直な奴がはがゆい反面、うらやましいのだろう。おそかれはやかれ皆、大人になるのだから急がずとも良いのだが」
そして、一つ目小僧はぴょん、と太郎の背中から飛び降りた。
「ま、だからといって、なんでもいっていいわけではないぞ。それに番傘の使い捨ても気になるところだ。さっそく、からかさ小僧に確かめてこよう」
太郎があわてて、
「では、私が子供っぽく未熟だからいけない、ということかい」
と聞くと、一つ目小僧はニヤリとした。
「そうはいってない。それにできる奴、というのは大人になっても、どこかしらに無邪気さが残っているものだ。世の中に合わせるばかりが能じゃなかろう」
そして、じゃあまた近いうちに、と手を振ると、今来た道を戻っていってしまった。
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ぶつくさ太郎と一つ目小僧 其の十一