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天狗のなやみごと 其の一(全十二話)

日本昔ばなし 天狗のなやみごと (第一話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
村の子どもたちと遊びたくてたまらない天狗のコテンだったが…⁉︎

昔々あるところに天狗の住む山があった。

天狗の名はコテンといった。彼はとある村はずれの小さな山を守っていた。

小さな山だったので、ふだん人通りも少なく、コテンはいつも退屈していた。


あるスカッと晴れた朝。コテンはいつものように山のてっぺん岩に腰掛け、遠眼鏡で村をのぞいた。

遠眼鏡だと75里(約300キロメートル)先まで見渡せる。

のぞいた先では子供たちが相撲の真っ最中だった。


どうやら村一番のガキ大将と村一番の小柄な子との対戦らしい。

「やれやれー!」

「負けるな、負けるな!」

土俵で組み合う二人を中心に四方八方から掛け声がとび、笑い顔が弾けているのがコテンにもよく見えた。

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「おーおー今日もやっているな」

コテンは羨ましそうにつぶやいた。

「おれも仲間に入りたいなぁ。でもなにしろおれの鼻は目立ちすぎる。きっと怖がられてしまうだろう。なにかいい方法はないものか」

いつもなら諦めてしまうところだが、今日はスカッと晴れているし、なんだかうまくいきそうな気がした。


コテンは大判の手拭いで、目だけは外をのぞけるように頭にぐるりと巻いてみた。

湖面に映してみると、これはこれで洒落者のいでたちに見えないこともない。

「よし、これでいってみよう」

コテンはにっこりすると、空を自在に飛べる羽団扇(はうちわ)を片手に、村めがけて勢いよく大地をけった。

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天狗のなやみごと 其の二