〜日本昔ばなし 天狗のなやみごと (第一話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
村の子どもたちと遊びたくてたまらない天狗のコテンだったが…⁉︎
昔々あるところに天狗の住む山があった。
天狗の名はコテンといった。彼はとある村はずれの小さな山を守っていた。
小さな山だったので、ふだん人通りも少なく、コテンはいつも退屈していた。
あるスカッと晴れた朝。コテンはいつものように山のてっぺん岩に腰掛け、遠眼鏡で村をのぞいた。
遠眼鏡だと75里(約300キロメートル)先まで見渡せる。
のぞいた先では子供たちが相撲の真っ最中だった。
どうやら村一番のガキ大将と村一番の小柄な子との対戦らしい。
「やれやれー!」
「負けるな、負けるな!」
土俵で組み合う二人を中心に四方八方から掛け声がとび、笑い顔が弾けているのがコテンにもよく見えた。
「おーおー今日もやっているな」
コテンは羨ましそうにつぶやいた。
「おれも仲間に入りたいなぁ。でもなにしろおれの鼻は目立ちすぎる。きっと怖がられてしまうだろう。なにかいい方法はないものか」
いつもなら諦めてしまうところだが、今日はスカッと晴れているし、なんだかうまくいきそうな気がした。
コテンは大判の手拭いで、目だけは外をのぞけるように頭にぐるりと巻いてみた。
湖面に映してみると、これはこれで洒落者のいでたちに見えないこともない。
「よし、これでいってみよう」
コテンはにっこりすると、空を自在に飛べる羽団扇(はうちわ)を片手に、村めがけて勢いよく大地をけった。
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天狗のなやみごと 其の二