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天狗のなやみごと 其の五(全十二話)

天狗のなやみごと

日本昔ばなし 天狗のなやみごと (第五話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
自分の山で親子を発見したコテンだったが…

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天狗のなやみごと 其の一

次の日の夕方、コテンが自分の山の上を羽団扇で飛んでいた時に、山のてっぺん近くの木陰に誰かの影がチラリと見えた。

「おや?もう夕方なのに、まだ山を降りないとは珍しい」

秋の夜は暮れるのが早い。そろそろ足元が危なくなる頃合いだ。

近づくと、父親と子供が座り込んでいるのが見えた。

天狗のなやみごと

どうやら父親のほうは怪我をしているらしく、どこかで転びでもしたのだろう、足を抱えて赤い顔でうめいている。

寄り添っている子どもは見たことがある顔だ。そうだ、相撲をとった時にいた子だ。

あの時のことを思い出し、コテンの胸はキュッとした。

でも、このままほっとくわけにいかない。コテンは意を決して、ふたりの目の前におどり出た。

「ど、どうした? 歩けないのか?」

ふたりはハッとしたようにコテンの方を見たので、コテンはやっぱりドキドキした。

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天狗のなやみごと 其の六