〜日本昔ばなし 小豆洗い(あずきあらい) (第七話)〜
なにごとにも事情はあるのだ…もちろん小豆洗いにも。
最初から読みたい方はこちら↓
小豆洗い(あずきあらい) 其の一
小豆洗い(あずきあらい) 其の二
小豆洗い(あずきあらい) 其の三
小豆洗い(あずきあらい) 其の四
小豆洗い(あずきあらい) 其の五
小豆洗い(あずきあらい) 其の六
小豆洗いはしょんぼりした様子で続けた。
「その昔、美味しいとほめられるのが嬉しくて、寺に来るものに毎日おはぎをふるまっていたんです」
平六は頷いた。
「そんなころもあったんだね」
「はい。でもおはぎがタダで食べられると噂が広まって、大勢の方が押しかけるようになったんです。さすがに対応しきれず、やがて材料もつきてしまい、私も病にかかってしまいました」
「それは大変だったね。私は妖怪は不死身で丈夫なのかと思っていたよ」
突然の能天気な平六のコメントに小豆洗いは目をキトキトさせた。どうやら憤慨したようだった。
「そんなことはありませんよ!それに妖怪だって疲れます」
「す、すまない。つづけておくれ」
「…そこで『おはぎ、やすみます』と看板を出して養生していたんですが、それでも諦めきれない方が大勢押しかけてきまして。やがて寺の外から私を罵るようになりました。その声が朝から晩まで聞こえてきて」
「ひどいなぁ」
「でしょ。流石に私も腹が立ちまして。それからいたずら心で「お前さまを取って食おうか」などと呼び込みのセリフに付けてみたのです。そうしたらだれもが鵜呑みにして、怖がってこなくなりました」
「なるほど」
「でも、やっぱりおはぎづくりは大好きで。美味しいおはぎができると誰かに食べてもらいたくて。また振る舞おうと寺に来たものに近づいたら「噂の人喰い妖怪じゃぁ。毛むくじゃらの化け物だぁ!」と叫んで逃げられました。…ですからお前さまたちは久しぶりの客人だったのです」
「なるほど。ようくわかった」
平六はふたたび、うなずいた。
「お前はまったく悪くない。しかし、このままではお前は誤解されたまま退治されてしまう。今日はあんこはもうないようだが、今の話を外にいる者たちに納得させるためにおはぎ以外で彼らをもてなせる方法はないかい」
小豆洗いはいたずら好きそうな目を今度はうれしそうにキトキトさせた。
「私に良い考えがあります。どうぞ皆さまを連れてきてください」
続きが読みたい方はこちら↓
小豆洗い(あずきあらい) 其の八