〜日本昔ばなし 小豆洗い(あずきあらい) (第八話)〜
小豆洗いの正体わかって大団円…?!
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小豆洗い(あずきあらい) 其の一
小豆洗い(あずきあらい) 其の二
小豆洗い(あずきあらい) 其の三
小豆洗い(あずきあらい) 其の四
小豆洗い(あずきあらい) 其の五
小豆洗い(あずきあらい) 其の六
小豆洗い(あずきあらい) 其の七
平六が寺の外に戻ると、皆、驚いて出迎えた。
「戻ってくるのが遅いからてっきり食われたのかと思ったぞ」
「安心してください。小豆洗いはあなたたちが想像しているようなものではありません。金兵衛さんと剛助さんが戦った相手は小豆洗いがおもてなしとして出したおはぎだったんですよ」
「おはぎ?あれが?」
うちしひしがれていた金兵衛と剛助は、自分たちの手や体についた残りカスを見つめた。
「はい。わたしはご馳走になってきました。小豆洗いは外でずっと待っていた残りお二人ももてなしたいそうです」
野次馬でやってきた二名は平六の話をまったく信じようとしなかった。
「そんなことがあるかい。間抜けなお前のことだから間違えた場所に入り込んでお供えのおはぎでも食べて帰ってきたんだろう」
「そうだそうだ」
「よさないか」
剛助が割って入り、金兵衛も加勢した。
「平六の言うとおりかもしれない。手についたものを少し舐めてみたが、これはあんこだ。ためしにもういちど入ってみようじゃないか」
あたりは夜明け前のやわらかい光で満ち始めていた。
平六を先頭に皆で寺に入ると、遠くにまた二つ赤い光が見えた。
「あれはろうそくの光なんです」
平六が言い終わらないうちに、ボタボタっという音がして、なにかが落ちてきた。
「ひゃあっ」
ついてきた野次馬二名が声を上げた。みるとふたりの頭の上に何かが乗っかっている。
「平六め、だましたな!こ、これはいったい、なんの仕掛けだ!」
剛助がひょいと、ひとりの頭からその何かを掴み取った。
「なんだろう、これは…?この匂い…なんだ、ナスの糠漬けだ」
そのとき、小豆洗いの声があたりに響き渡った。
「みなさま、本日はお訪ねいただきありがとうございます。残念ながらおはぎが終わってしまいましたので、ナスでおもてなしさせていただきます。これぞホントのお・も・て・ナ・ス」
とたんにフッと二つの蝋燭の光は消え、あとには呆気に取られた平六たちがとり残された。
野次馬たちは村に帰る道のりの間中、糠漬けの樽から出てきたような臭いを身にまとって、ずっと不機嫌そうであった。
(こんなことをするから誤解されてしまうんだぞ。それにしても小豆洗いは根っからのいたずら好きだなぁ)
平六は笑いをこらえるのに必死であった。
その後、この寺に小豆洗いは出なくなったそうである。また、平六はのちにおいしいおはぎを出す茶屋を小柄な友と開いて大変繁盛したそうである。
(了)