〜日本昔ばなし 妖怪皮算用(ようかいかわざんよう)(第七話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
河童からはどうにか逃げきれた二人だったが…?!
逃げきれたは良かったが、必死で逃げているうちに男と妻はいつのまにか、すっかり山の奥深くまで入り込んでしまっていた。
鬱蒼(うっそう)と茂った木々はすべて同じに見え、歩いても歩いても自分たちがどこにいるのか皆目見当もつかなかった。
「このままあてもなく歩いてもしょうがない。いったん家へ帰ろう」
しかし、帰る方向すらわからない。男と妻は途方にくれた。しかし、妻のほうはすぐに思い直したようだった。
「どうせ迷ってしまったんです。このまま、なにも手に入れずに帰るなんて私はいやです。次の妖怪を探しましょう」
「しかし捕まえるための網ももうないぞ」
男がため息をつくと、妻は少し考えてこう答えた。
「河童の鱗(うろこ)は奪おうとしたから失敗したのではないでしょうか。次の妖怪には事情を話して、分けてもらえないか頼んでみましょうよ」
昔から失敗してもタダでは起きない妻にいつも感心させられてきた。しかし今回ばかりはそれが通用するとは思えなかった。
「そんなにうまくいくだろうか」
男がそう言った時、びゅうと一陣の風が吹き、空に雲が突如、吹き現れた。
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妖怪皮算用(ようかいかわざんよう) 其の八