〜日本昔ばなし 妖怪皮算用(ようかいかわざんよう)(第十八話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
絶体絶命のピンチが到来…⁉︎
しかし、赤鬼が男をくらおうとした瞬間、表情が大きく歪んだ。そして
「グェッ!」
男を吐き出し、口を押さえた。
「おい! 今、俺の舌になにか刺しやがったな!」
「し、知りません!」
「なめた真似しやがって、、おい、兄弟たしかめろ!」
男は赤鬼の手が離れたので急いで逃げようとしたが、恐ろしさに腰が抜けていたので足がもつれ転んでしまった。
そこへ青鬼がとびつき胸ぐらをつかむ。しかし彼も
「グオッ!」
と叫ぶと男から手を離した。青鬼のほうは手を押さえている。
なんと、山姥にもらった髪が男の懐から着物を突き抜け、針のような鋭さで二人を刺していたのであった。
男が手に持つと薄暗がりの中で髪はキラリと光り、それを見た鬼たちは震え始めた。
「や、やめてくれ! やめてくれ…そのように尖ったものは…頭が痛くなる! もうおまえたちを食うのはあきらめるから、勘弁してくれ!」
そして、二匹の鬼はわめきながら、すごい勢いで洞窟の外へと逃げていってしまった。
しばらく男と妻は呆然としていた。
「山姥(やまんば)どのにまた助けられたなぁ」
男がポツリというと、妻も胸を押さえながら深く頷いた。
「さ、この隙に、急いでここから逃げよう」
二人は急いで身支度をし、洞窟の外と思われる方へと向かった。
途中ところどころに、鬼たちが人々からせしめたさまざまな宝が山と積んであった。目もくれず先へ進もうとしたそのとき、男の足が止まった。
積んである宝の山の中に朝顔の鉢がみえたのだ。
「あれは朝顔の変わり種ではないか」
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妖怪皮算用(ようかいかわざんよう) 其の十九