〜日本昔ばなし 妖怪皮算用(ようかいかわざんよう)(第十五話) 文・絵 ムトゥチズコ〜
はたして妻の作戦はうまくいくのか…⁉︎<
恐ろしさにまんじりともできないのではないか、と思われたが、前日の疲れで二人はいつの間にか眠ってしまっていた。
「おはようございます。お身体の具合はどうでしょう」
晴れやかな声とともに、昨日の女が起こしにやってきた。
「昨日、夕餉(ゆうげ)を持ってきた時はもう、お二人はよくお眠りになっていました。朝餉(あさげ)は召し上がれますか? 」
そして、盆のふかし芋を差し出してくる。艶然と笑みをたたえているその姿は、相変わらずうつくしい。
昨日見た鬼の姿は夢だったのでは?とも思えてくるが、さりげなく足元に目をやると、やはりびっしりと生えた毛と曲がった大きな爪がみえた。
妻が少し上ずった声で話し始めた。
「まぁ、おいしそう。昨日からこんなに世話になって。どんなお礼をすればいいのでしょう。そうだ、私の持っている菓子を差し上げましょう」
そういうと、ふところから甘納豆の包みを取り出して開き、女に差し出した。
「これは鬼のヘソを集めて甘く煮たものです。よろしかったら食べてみてください」
女の目が大きく見開かれるのが男と妻によく見えた。男も声の震えを必死に抑えながらこういった。
「私も大好物ですな。この世で何がうまいかといったら鬼のヘソがいちばん」
女の表情がサッと変わったのがわかった。
「まぁ!鬼のヘソが食べられるとは知りませんでした。今、お茶を入れてまいります」
そういって奥に消えていったので、男と妻は、すぐに音を立てないように気をつけながら、後を追った。
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妖怪皮算用(ようかいかわざんよう) 其の十六