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妖怪皮算用(ようかいかわざんよう)其の二十一(全二十四話)

妖怪皮算用
日本昔ばなし 妖怪皮算用(ようかいかわざんよう)(第二十一話) 文・絵 ムトゥチズコ〜

またまた転がった男が目を開けるとそこは…⁉︎

妖怪皮算用(ようかいかわざんよう)
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「イデデデデ」

転がり終わった男が目を開けると、あたりは濃い霧に覆われていた。

どこか骨を折ったのでは? とあちこちをさわり確かめたが、よくよく頑丈にできているらしい。今回も無事なようであった。

ほっと一息ついていると、聞きおぼえのある声がした。

「おや、また会ったな」

山姥(やまんば)であった。山姥は霧中をふわふわと浮いていた。気づけば自分も地面に立っている気がしない。上下左右の感覚がなく、ただ浮いているようだ。

「山姥どの。わたしは死んでしまったのでしょうか」

「そうともいえるし、そうでないともいえる。いまちょうど、端境(はざかい)のところにいる」

「なんと!」

「ここはもともと人でないものや人でなくなったもの、人でなくなろうとしているものたちのとおり道だ。つまりはそういうことだ」

このような時がきたらもっと恐ろしさに震えるかと思っていたが、案外冷静に受け止めている自分に男は驚いていた。

山姥(やまんば)はツッとこちらに寄ってきた。

「おまえは死にたくないと言っていたな。いまがちょうど選べるときだぞ」

男の心臓は早鐘を打ったようになった。

「いま選べるのですか」

山姥(やまんば)は頷いた。

「閻魔をたずねて教えを乞うがよい、とそなたに教えたが、もはや時がきた。いままさに、おまえの人としての寿命が尽きようとしている。どちらにしろ、一旦死なないと妖怪にはなれないのだからな」

男はハッとした。なぜ今まで気づかなかったのか。もし妖怪になれる機会があるのだとしたら、自らが人間でなくなるときこそが、その時であるに決まっている。

山姥(やまんば)は男の気持ちを見透かしたようにこう続けた。

「そしておまえはまだ死んではいない。選べるのだ」

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妖怪皮算用(ようかいかわざんよう) 其の二十二