〜日本昔ばなし 河童のちえくらべ (第五話)〜
河童のカシラ、サンの出番!もうあとがないぞ!
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河童のちえくらべ 其の一
河童のちえくらべ 其の二
河童のちえくらべ 其の三
河童のちえくらべ 其の四
イチの手は思い切りよく、固い鍋のふたに打ちつけたせいで大きくはれあがっていた。
河童たちは池のほとりまで戻ってくると、ねぐらにしている岩場の陰からニイが代々河童族に伝わる軟膏をもってきた。
イチの手の腫れたところにその軟膏を薄くのばしてやると、あら不思議、腫れは徐々にひきはじめ、やがてイチの手はもと通りになった。
サンは腕組みをしたまま、ニイが手あてするのをじっとみていた。
そして、ようやく口をひらいた。
「もう俺がいくしかないな」
それを聞いて、イチとニイは反対した。
「サン。もうおじいはあきらめよう。返り討ちにあったら、ことだぜ」
「そうだそうだ。サンにもしもなにかあったら、おれたちはどうすればいい」
サンはゆっくりとかぶりを振った。
「俺のこけんに関わることだ。今まで狙ったやつをあきらめたことは一度もねえんだぜ」
しかし、最近の失敗続きでサンもすこし考えを変えたようで、こう続けた。
「と、いいたいところだが、おじいもいまは相当警戒しているだろう。明日はおじいがワラジを売りに出かける日だ。まずは手始めにつれの馬のアオを狙おう」
翌日、河童たちは内職で編んだワラジを馬のアオにのせ、町へ売りにいくおじいさんのあとをつけた。
空には雲ひとつない、日差しの暖かな日であった。河童たちは物陰に隠れながら、おじいさんとアオを追った。
こんなに池から離れるのは久しぶりなうえに、道中、いつも湿っていなくてはならない河童たちの頭の皿はだんだんと乾きはじめた。
並行して消耗していくのはさけられない。
山を二つあたり、こえたところでお爺さんとアオはお昼を取ることにしたようだった。
おじいさんがアオの手綱を木に結びつけ、すこし離れたところで昼飯を食べようと腰をかける。
「いまだっ!」
サンはすこしふらふらしていたが、いつも通りの素早さでアオの尻の穴めがけて手を伸ばした。
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河童のちえくらべ 其の六
河童のちえくらべ 其の七
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河童のちえくらべ 其の十二