〜日本昔ばなし 河童のちえくらべ (第八話)〜
手を取り返そうと、おじいさんのもとに向かったニイだったが…。
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河童のちえくらべ 其の六
河童のちえくらべ 其の七
やがて日が落ちはじめる時刻となって、サンも例の薬が効いたらしく、いつもの調子が戻ってきた。
サンが立ちあがろうとしているのを見て、あわててイチが飛んできた。
「サン、まだ休んでなきゃだめだよ」
「ありがとよ、イチ。でももう大丈夫だ。それよりニイの姿が見えないようだが」
サンはいつものようなしっかりした口ぶりに戻っていた。
「サ、サンに精をつけてもらおうと栄養のあるものを探しに行ってるんだ」
イチがしどろもどろに答えると、サンはじぃっと見透かすような目を向けてきた。
「それはありがたいが、まさかお前たち、変なことを考えているのではあるまいな」
「変? な、なんのこと?」
「俺の手を取りかえそうと思っているのではないのか。おじいはアオに手を出されて今ごろカンカンになっているに違いない。次にあったものは鎌でバラバラにされかねないぞ」
その頃、おじいさんはワラジを町で売り終わって家にかえってきていた。
「いやぁ、今日はワラジ売りだけでなく、河童どもと大立ち振る舞いもあったし、すっかり疲れた」
アオを厩(うまや)に連れていくと、土間で足を洗って囲炉裏のある部屋に入ったとたん、おじいさんはおどろいた。
そこにはちんまりと河童のニイが座っていた。
「何をしにきた、このイタズラ河童が」
すぐに追い払おうとしたおじいさんに対し、ニイは深々と頭を下げた。
「おじい。頼みがある。サンの手を返して欲しい」
「なんだと」
「今ならまだ間に合うんだ。頼む、返してくれ」
「だめだ」
おじいさんはとりつく島がなかった。
「お前たちにはいい薬だろう。だいたい、尻子玉を抜かれた馬や人間は呆けたようになって使いものにならなくなるんだぞ。わかっているのか」
おじいさんの答えは想像できていたらしく、ニイはすぐに次の言葉を続けた。
「そうか。しかたない。では、俺の手と取り替えてくれ」
そして、もっと深く頭を下げたのだった。
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